| 第2章 ファックの国の住人ヘンリー・ミラーと、彼の最愛の女 |
エモーショナルな思索を展開する上で、これ以上はないという作家達の存在を、ぼくはこの本であなたに伝えたいと思う。彼らはストーンズやMacintoshやスポーツカーと同じように輝きながら、ぼくらをエモーショナルな世界に連れていってくれる。しかも同時に、その意味について考察することが可能な言葉を教えてくれる。
つまり、そいつは美味しい料理であるのと同時に、料理を食べるのに必要なナイフとフォークでもあるというわけだ。優れた文学というものは、そういうものだ。
"Blessed Poison"というのは、ストーンズの新しいアルバムのタイトル案だった。今度のタイトルは"Blessed
Poison"になるらしいと聞いた時、今まででいちばんいいタイトルだな、とぼくは思ったものだった。だがアルバムが正式にリリースされた時には、"Bridges
To Babylon"になっていた。
ぼくは落胆し、だがふと気がついた。そうだ、こいつは文学の世界への、ミック・ジャガーからの贈り物なんだ、と。"Blessed
Poison"、祝福された毒。これほど、反抗と官能と疾走感、呪詛と賛歌と苦悩に満ちた文学の世界を言いあらわした言葉はないではないか。
では、最初の作家を紹介しよう。
セックスと愛を描ききった、稀に見るポジティヴな作家。
哲学と宗教と愛の感情のすべてを、一度きりのセックスのなかに埋め込もうと試みた作家。
そして、十代の頃から、ぼくがいちばん好きな作家でもある。
彼の名前は、ヘンリー・ミラーという。