| 第7章 ピーター・ラビットをめぐる英国の旅 |
1943年、77歳でポターは亡くなった。「私の所有する土地や建物は、いつまでも保存し続けるという条件で、ナショナルトラストに寄付すること」という遺言がのこされていた。
ぼくらは再びローバー75に乗り込み、『りすのナトキンのおはなし』の舞台となったダーウェントウォーター湖へいってみた。ピーター・ラビットのシリーズでぼくがいちばん好きなのがこの話なのだ。悪戯をしてふくろうの爺さんに皮を剥がされそうになり、かろうじて尻尾をチョン切られて逃げるりすの話だ。だがナトキンは反省なぞしやしない。尻尾がなくなった後も、悪戯しつづける……というところでこの話は終わっている。そんな童話が、他にあるだろうか?
ナトキンは、ビアトリクス・ポターの不屈の魂を代弁しているかのようである。
『ピーター・ラビットのおはなし』では、小さなウサギの恐怖が描かれている。そういう童話も珍しいのではないか。
童話ほど的確に現実を映し出す鏡はない。そいつは、あまりにも深く、残酷なまでに鋭敏なメタファーなのだ。そして、ピーター・ラビットのシリーズは、産業革命を通過したイギリスと、現在われわれが置かれているすべての世界のメタファーなのだ。