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■「クロノクロス」が表現するアニミズムとシャーマニズム

 環境問題に関するヨーロッパ式の考え方というのは、この世界で一番尊い人間の住める世界ではなくなるから環境は守らなくてはいけない、という論理ですね。でも、日本人はそうじゃないでしょう。日本人にはベースに仏教というものがあり、仏教というのは、石や草や木やちっちゃな虫やすべてのものに命があって、それは等価だと考えます。
 それが仏教的な世界観のベースです。
 だから、一番偉いのが人間でその人間の命を守るために……という発想は全然ない。そこが、西洋式の環境問題に対する考え方ともっとも異なる点だろうと思います。今は「葬式仏教」だなんて言われ、ぼくもブッダを信仰しているとは言い難いけれども、多くの日本人の魂のなかに仏教的な物の見方はしみ込んでいるにちがいないと思うわけです。それは、昔もそうだったし、今現在最先端の日本でも実はそうなんだと思う。
 環境問題ばかりではなく、西欧の思想と日本のそれとは、やはり相容れないものがあるような気がします。日本人は滝を尊び、だけどヨーロッパではあちこちの広場に噴水があるでしょう。ごく自然に上から下に流れる水を愛でるのが日本の文化で、それを人工的な力によって下から上に噴き上げるのが西欧式なわけですね。赤ん坊は無垢だから可愛いとするのが日本で、西欧では、赤ん坊は教育されていないので犬や猫と変わらない、と考える。これは、かなり違うなあと思います。
 つまり、西欧では、自然は克服すべき強大な敵として存在し、しかし日本の自然はもっと優しく、共生する相手、もしくは信仰の対象として存在してきたわけです。
 ぼくはゲーマーなんでいろんなゲームをやるんですが、多くのゲームのなかでRPGがいちばん好きです。スクウェアのファンだったんだけど、スクウェアがエニックスと合併しちゃったんで、驚愕してしまいました。「ファイナルファンタジー」にロトの剣が出てくるのか、みたいな。「ドラクエ」にチョコボが出てくるのかよ、みたいな(笑)。本当にそうなったら唖然としてますけどね。
 その「ファイナルファンタジー」を出してるスクウェアに「クロノクロス」というゲームがあります。これは非常に優れた、現代日本が世界に誇る表現だとぼくは思っていますが……「クロノクロス」ってやっとことある人いるかな? いるよね、少しは。
 どういうゲームかというと、パラレル・ワールドに放り出された主人公が冒険していくわけですね。それで、途中でいろんなステージのボスと戦わなきゃいけない。そのボスというのは、例えば大地をシンボライズする、大地を司るドラゴンだったり、海を司るドラゴンだったり、空や自然を代表する存在なんですね。
 このボスキャラのパラメーターの設定が絶妙で、普通のゲームだとすごく強いわけですね。中ボスなんだから。ところが「クロノクロス」の中ボスは弱いんだよね。
 夜中の3時頃、中ボスなんで多少緊張し、「よし、倒すぞ!」と決めてコントローラーを握る。そうすると大地を司るドラゴンは、すぐ倒れちゃう。そこで、ハッと気が付くんだよね。大地というのは、こんなにも穢れやすいものだったのか。海というのは、こんなにも壊れやすいものだったのか、とね。
 人間というのは、実は悪い存在なんだ。人間なんかいなくなった方が、地球にとってはいいのかもしれないということを「クロノクロス」をやっている多くの小学生達が考えたにちがいない、という気がします。そういう意味でも、今の小学生や中学生は、否応なく大人なんだろうな。
 そして、この「クロノクロス」における思想というのは、西洋式の環境問題に関する考え方とは歴然と違うわけですね。
 ゲーマーでない人は気がついていないけれど、日本のゲームというのは、実はものすごいところにまで来ているんと思います。今ちょっと元気なくなってますけど、でも、スクウェアが出していた「ファイナルファンタジー」や「クロノクロス」は、あるいは「デュープリズム」や「ゼノギアス」というタイトルは、文学とか音楽とかアートとかそういうジャンルを越えて最先端を走る優れた表現だとぼくは思っています。それでさ、そのコアにある思想ってのは非常に仏教的なんだよね。だから、あ、繋がっているんだなぁと思う。
 この「クロノクロス」のゲームの中で、ある島に行かなきゃいけない。それは妖精の島なんだよね。主人公を操って島の中に入っていくと、妖精に「あっ、人間だ! 恐い! 人間なんか悪い存在なんだから帰れ! ここに来るな!!」って言われるわけ。そうすると、「ウッ」と思うんだけど、でもその妖精を皆殺しにしないと次のステージに進めないから、最初は「ごめんね。ごめんね、妖精君。殺しちゃって」みたいに思いながら攻撃する。でも最後の方は、「うざいな、もう。早く死ねよ」みたいな。その早く死ねよって思ってる自分にハッと気付いて、「あ、今の人間ってこうなっているんだ」と思うわけですね。そういうことをユーザーに思わせる力はすごいなぁと思う。
 そこで、典型的に語られる思想というのは、アニミズムとシャーマニズムです。アニミズムとシャーマニズムというのは、みなさん御存知だろうと思いますけど、石や木や水やかまどにもそれぞれみんな神がいるという考え方だよね。大きな木にはもう神がいるんだ。吹いてくる風にも神が宿ってる。それがアニミズムで、そういう存在に祈祷を捧げるのがシャーマニズムです。
 それって最近発見したんですけど、道教の影響だよね。


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