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■道教UNIX論

 道教というのは、老子と荘子という人がいて、彼らが考えたのが老荘思想であって、それこそがいわゆる道教なんだとぼくは思っていました。しかし、ここ二、三年、興味をもっていろいろ調べてみたんですが、どうやらそうでもないらしい。もっと古くからあった宗教であり、思想であり、哲学であり、けれど同時にそれらのどれでもない、というのが道教なんですね。老子と荘子というのは、それまでの民間レベルの道教の思想をまとめてきちんとひとつの体系にしたわけで、道教そのものってもっと前からあるんですね。
 南船北馬という言葉がありますが、これは中国大陸の文化を考えるときに、南は船の文化で北は騎馬民族の馬の文化だ、という意味です。そして道教というのは、船の文化と一緒に日本に入ってきたのだろうと言われています。
 邪馬台国の卑弥呼が、怪しげな術を使って人心を惑わしたということが「魏志倭人伝」に書かれているそうですが、この卑弥呼というのは日本最初の最高のシャーマンだったんじゃないかなというのがぼくの個人的な意見なんです。
 卑弥呼が使ったのはアニミズムを前提にしたシャーマニズムで、多分その時に大麻かなんかを使って、すごいハイになって向こう側の世界と交信したのだろうと思う。これこそが、道教です。
 そして今でも、僕ら日本人のベースにあるのはそういうもんじゃないか。つまり、道教なんじゃないかと思うわけですね。仏教以前に、道教ってあったんだからね。
 ぼくはマックユーザーなんで、マックユーザー以外の方は多分ピンとこないかもしれませんが、今のマッキントッシュというのはベースがUNIXです。その上にOS Xが乗っています。さらにその上にいろいろなアプリケーションが乗って走っている。
 この日本の一番下にある、マックで言うならばUNIXの部分が道教なんだよね。
 その上に乗っているのが、神道と仏教なんだよ。この仏教と神道はOS Xです。
 その他のいろんな思想は全部、個々のアプリケーションなんだと思うんです。キリスト教や儒教や朱子学までを含めて、それは個別 的なアプリなんだろうと思うわけです。
 じゃあ、僕らの社会の日本という社会の一番下にあるUNIXである道教ってどんなものだというと、それは宗教とか思想とか哲学とかどれとも言い難いものなんだよね。
 道教というのは、魚を捕る時の竹の編み方であり、赤ん坊のおぶり方であり、おまじないの仕方であり、それから、豊作を願う時のお祭りのやり方であり、あるいは料理の仕方である。味噌や醤油はどう作ればいいかとかね。つまり生活文化雑多に関わることがみんな道教なんですね。生活習俗一般 に根差すものが道教だったのではないでしょうか。
 そして道教の面白いところは、やがて老子と荘子がそれを体系化するわけですね。そして、そういう迷信とかおまじないとかお守りとかそういうのはよせ、と。体系化された思想としてちゃんとした孔子に対抗しようじゃないか、ということになってくるわけです。
 この時、普通だったらAというものがBというものが乗り越えたら、Aは捨てられるよね。ところが道教って面 白くて、老荘思想が出てきた後も、民間レベルの部族的な信仰としての道教って残るんですね。現に残っていますよ、僕らの社会に。
 道教って、ストーンズみたいだよね。ブルースベースで、でもロックンロールやレゲエやヒップホップや、アイルランドの音楽まで取り入れ、それらすべてを含んだものがストーンズ・ミュージックである、という。
 都会に住んでいる人はあまり知らないかもしれないけど、ぼくは瀬戸内海の島が田舎というか、そこにもう亡くなってしまいましたが祖母が住んでいて、子供の頃は毎年夏休みになるとその島へ行ってました。そこにはまだ道教的なものってたくさん残っていました。
 それで僕らはこうやってものすごくいい加減に……いや、ぼくとみんなを同じにしちゃ悪いかもしれないけど、でも結構みんないい加減だよね? 例えば宗教的には、ほとんどの日本人がいい加減でしょう。だってクリスマスやるでしょ、みんな。子供の頃は、サンタクロースいると思ってたでしょ? でも、それから一週間以内に初詣に行くよね。で、死ぬ 時は仏教でしょう、大体。
 というふうに、いろんな宗教を共存させて、全然平気でいられるこのいい加減さ。それは多分、ぼくらのベースであるUNIXが道教だからじゃないかな。
 ぼくらは道教にはもっと注目すべきだし、自分のベースには道教があるんだということをもっとポジティブにとらえると、すごく生きやすくなるのではないと思います。いいんだよ。初詣、クリスマス、結婚式、お葬式、全部個々のアプリケーションなんだから。ベースの道教というUNIXシステムは非常に堅牢で、だから僕らは絶対にフリーズなんかしないんです。そんなふうに考えると、すごく、こう、気が楽というかね。


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